読書子

昨年、亡くなられた日本を代表する経済学者、碩学という言葉がピッタリの宇沢弘文氏が1980年代後半に岩波新書として上梓された概説書である。経済学とはなにか、経済学の考え方とはどういうものかを、アダム・スミス以来の経済学のさまざまな立場を現代に至…

久しぶりに知らないことに対する知的欲求が高まるのを感じた。本書に展開されている著者の論点は私にとって初めて目にするものであるし、今まで持っていた歴史的な知識の誤り(もしくは限界)を教えてくれている。イスラームに対する我々の知識がほぼ欧米経由…

ラジオで月尾嘉男先生が南方熊楠を紹介されていた。知ってるつもりだったが、何も彼について理解していないことに気がつき、本書と水木しげるの『猫楠』を買い求め、一気に読んだ。南方熊楠は日本の民俗学の祖であり、粘菌を中心とする生物学の研究者である…

単行本が発売されたときから、読みたくてしょうがなかった作品をようやく読むことが出来た。著者の佐野眞一氏は東電OL殺人事件を扱った作品などノンフィクションで有名であるが、実際に作品全体を通して読むのは今回が初めてであった。本作は、日本を代表す…

暗〜い気持ちになったこと、を思い出した。酒鬼薔薇事件といい、今回の佐世保の事件といい、忘れていた少年犯罪のやるせない思い=「子供がなぜ?」という結論の出ない問いを思い出したのであった。そんな折、あのショックだった佐世保小6同級生殺害事件から1…

図書館でいとうせいこう氏の話題作を借りて読んだ。不思議なタイトルに引きつけられたのと、『見仏記』でしか知らない小生には著者の小説って。。。というミーハーな関心も手伝って日頃全く手にしない小説を読むこととなった。『想像ラジオ』って何だろう、…

落ち着いた独特の低音でことばを繰り出す、政治学者・姜尚中は頭脳明晰にして論理明解。こんな話し方が儂も出来ればなぁと常々あこがれてきた。論争相手を完膚無きまで打ち砕くのに、物腰は穏やかで激高することはない。そんな著者を羨ましく思ってきた。感…

金子さんが生きていたら、この選挙結果をポジティブに捉えて解説してくれたことだろう。彼の意見が聞けなくなった今、小生は前向きに生きる指針を失っている。 流通ジャーナリスト金子哲雄はビジュアルの緩さ・その優しさとは異なり、本当に真のある男気・気…

買い物のついでに寄ったアキバの本屋さんで、この本を手に入れました。今年の2/26まで府中市美術館で開催されていた「石子順造的世界」展の図録を出版したモノです。行きたかったのですが、やはり遠くて行けずじまいだったのです。『戦後マンガ史ノート』をは…

元来、ダンス・ミュージックや黒人の音楽系が苦手な小生は、マイケルについて余りに無知でありました。特にメディアがこぞって性犯罪者・白人化しているなどと垂れ流す怪しい情報に洗脳されていたのは、今思うと恥ずかしい限りです。あれだけマスコミに欺さ…

『USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実』(ちくま文庫)の続編とも言える作品。映画評論家の町山智宏氏は、アメリカの文化・社会全般の評論家として活躍し、その卓越した見識は、テレビのバラエティ番組の元ネタにもなり最近ではご本人自身が出演したり…

最近、どうも佐藤優マジックに罹ってしまっているようだ。新学期が始まり忙しい日々の中、気がつくと例のマルクス本以来、『国家の罠』『自壊する帝国』など氏の著作を片っ端から読み漁っている。どうも中毒患者のようだ。本作は暴露本のテイストもあるので…

こんなに笑ったのは何日ぶりだろう。いや〜ぁ、久しぶりに笑った。ホントに笑いながら、これ苦情とか抗議とか大丈夫なんだろうか、と心配になった。最近、全くマンガを読まなくなってしまい、ましてや買わなくなったモノだから存在自体を知らなかった。息子…

2年前、小生は「歴史的な学問進化の最高点に今、我々は触れている」と宣言したが、この最高点の高みは凡人である小生にはあまりに厳しく、2巻までは何とか読み終えたものの、その後、最終第3巻を1年近く開きもしなかった。目の前に現れる卑近なモノに飛び…

実はベートーヴェンの音楽に魅せられて、クラシックの演奏を聴くようになったのです。CDも一端に名盤と呼ばれるモノを買い漁るようにもなりました。コンサートにも行きました(あれだけ嵌っていたロックは行ったことがないのです、実は)。でも、ベートーヴェ…

本屋でタイトルに惹かれてしまい、ラスプーチンこと佐藤優氏の『私のマルクス』を手に取ってしまいました。すると衝撃的なことに小生と同級生では無いですか。しかも同志社出身。まるっきり同時代を京都で過ごした身として、どうしても読んでみたくなり文庫…

狐狸庵先生。違いのわかる男。その昔、小説をよく読んでいた(文学青年?の)頃、遠藤周作はそう呼ばれていた。だから愛読したのも、エッセーやユーモアの多い小説で、遠藤文学の神髄に触れる機会はついぞ無かったのである。 その小生が、遠藤文学のド真ん中、…

僕はどこまで知っていたのだろうか、あれだけお気に入りの作家だった星新一を。知ってるつもりになって、勝手な思いこみをしていたのは間違いない。あれだけの作品群があったことすら知らなかったのだから。。。最相葉月氏の労作『星新一 一〇〇一話をつくっ…

人気マンガ&ドラマ『ブラッディ・マンデイBLOODY MONDAY』のハッカーFALCONが著した(という形をとる)コンピュータの基礎知識の解説本。ハッキングというショッキングな宣伝文句の割には至ってまじめな本です。コンピュータの歴史・成り立ちからプログラミン…

以前から読みたかったが、あまりの大作であることに加え、理系の論文である点に二の足を踏んでいたのが正直なところであった。縁あってお借りすることができ、稚拙な頭でも読むことが出来たのは偶然とはいえ、名著との嬉しい出会いである。1巻は、物理学史…

昨年、夏に購入しながら先延ばしになっていた本をやっと読了(?)した。山田五郎著『知識ゼロからの西洋絵画入門』である。テレビでタレント・コメンテイター・評論家などの肩書きで活躍されている山田五郎氏は、元々編集者であり、敏腕出版者であるのはご存…

ネットの山友達が紹介してくれていた「ビッグコミックオリジナル」連載の漫画・石塚真一作『岳〜みんなの山〜』を初めて読みました。たぶん7巻の第6歩(7話)だと思うんですが、山梨のラーメン屋で読んでこれはいいねぇということで、早速1巻を買ってきて読…

文体なのだろうか、展開の方法なのだろうか、どうも相性の合わない作家というのがいませんか?小生にとって新田次郎はまさに「相性が合わない」ので、読みたい本が多いのに『槍ヶ岳開山』ぐらいしか読んだことがありませんでした。テーマに関してはぜひ読みた…

週刊少年ジャンプが創刊40周年だそうだ。現在は貧しくて買うことも無くなっていたのだが、今週号は久しぶりに買ってみた。「こち亀」や「銀魂」などは今でもたまぁ〜に見る(もちろん買わない)。40周年の特集ページを見ると懐かしい作品が顔を覗かせていた。「すす…

遠い昔、森村誠一の『悪魔の飽食』を読んだことがある。まさに震撼した。随分久しぶりに、その731部隊に関する著作を読んだ。不勉強な小生は青木冨貴子さんというフリーのジャーナリストを存じ上げなかった。この本も文庫になるまで知らなかった。本作で…

そもそもアイドルに余り関心がない。だから、この本を読んでも、元々名前を知っていたのは5人だけ。あとの十数名は名前も知らない。そんな小生すら読ませてしまうプロインタビュアー吉田豪の実力は折り紙付きだ。 読んでいて納得したのは、「アイドルは商品…

書店で歴史関係の本を探していると、何かに見つめられたような気がした。ふと振り返ると、懐かしい星新一の文庫本で、タイトルは『明治・父・アメリカ』とある。彼のショートショートに中学生時代嵌っていた小生は、すぐそれを手に取った。以前、『人民は弱…

友人のI先生から数学の本を借りた。キャッチじゃないけど「世にも不思議な数学の本」というのは、まさにピッタリである。小生の場合、高校まで数学は大好き(得意)であった。いや今でも関心があるし、好きである。ただ文系に転じた時から必要ない科目のような…

ついに定番が出た。私の中で下山事件関連の本は矢田喜美雄『謀殺 下山事件』で決まりだと思っていた。ジャーナリスト矢田喜美雄はその生涯を下山事件の他殺説に捧げた。彼によって線路上に残る血痕の路は明らかにされたのだ。自殺説では不可能な進行方向とは…

昨日、届いたハリー・ポッターの最終第7巻『Harry Potter and the Deathly Hallows』を読み始めています。英語のできない小生が電子辞書を片手に、舐めるようにして読んでいきます。カタツムリよりも遅いスピードです。それでも1章読み終わりました。600ペ…