take-bow2007-11-25

友人のI先生から数学の本を借りた。キャッチじゃないけど「世にも不思議な数学の本」というのは、まさにピッタリである。小生の場合、高校まで数学は大好き(得意)であった。いや今でも関心があるし、好きである。ただ文系に転じた時から必要ない科目のような位置づけにされてしまったのが長く不満であった。もしかしたら、小生はこの本で言う「問題は解けるのになんだかモヤモヤする人」に近いかも知れない。最近ふと手にした高校数学の参考書は、至れり尽くせりなのにも吃驚した。

 この本は、名著である。数学に対して何だか違和感があった処の根拠が示されている。「納得できないからワカラナイのである」し、「意味不明の概念を丸飲みさせられている気色悪さを感じる」とハッキリ記されている処が秀逸だ。その上、「わかる」ためには「受け取る人の頭の中にある型紙,テンプレート」に合うように説明しなければならない、ということが指摘されている。なぜ今まで誰も言ってくれなかったのだろう。よくよく考えれば、18世紀にカントが確立した認識論ではないか。哲学と数学では異なるとでも思っていたのだろうか。数学のもつモノを理解するツール性は、後追いのつじつま合わせでないテンプレートの提示が必要である事を高らかに宣言した書である。「教科書は解ける方程式しか取り上げない」ということは、小学校の算数から始まって自明のことだったのだ。一読をお薦めする。


畑村洋太郎『直観でわかる数学』 岩波書店 2004.9