take-bow2010-11-15

僕はどこまで知っていたのだろうか、あれだけお気に入りの作家だった星新一を。知ってるつもりになって、勝手な思いこみをしていたのは間違いない。あれだけの作品群があったことすら知らなかったのだから。。。

最相葉月氏の労作『星新一 一〇〇一話をつくった人』を読んだ。この評伝は、作家星新一の誕生とそのベースとなる家庭環境や生い立ち、日本のSFの成り立ちまで含めて著された、かなりの大著でもちろん並び立つモノがないことは言うまでもない。

しかし、敢えてこの労作に意見を述べさせて頂くなら-------
有名でだれでも知っている割にはあまり覚えていない、星新一
逆に最相さんは長い文章の割にはあまり出てこない、星新一

どちらも辛いが、そう感じでしまう。星新一の短い作品に込められた多くのことが今こそ見直されるべきで、そのために本作は多くの資料や証言などを駆使して星新一の人生を解き明かしている。空白の星製薬時代や周囲の人びとに投げかけるキツイ発言など、そこには僕の知らなかった星新一がいた。
ノンフィクションのライターとして、氏の冷徹なまでに公平で多角的な目は理解できる。しかし、星新一ファンにとって知りたくないこともある。それが「対象へのあふれんばかりの思い入れ」が感じられない、と言われてもしかたないように思えるほど公正なのだ。そして多くのことを僕に教えてくれた、この労作でも教えてくれなかったことがある。それは-------


誰にでも書けそうなのに、なぜ決して星新一の真似ができないのか。


である。永遠の謎であり、いつまで経っても僕にはショートショートの神であり続けるだろう。