take-bow2010-11-06

昨日、やっと念願の「東大寺大仏―天平の至宝―」展を見てきました。何よりもまず大仏がないのに、この名称は如何なモノか?と思いつつ上野に向かいました。特別展なので例によって高〜い入場料を払って、平成館という名の奥の建物まで歩く東博の庭はとても快適です。正倉院の御物も展示されている後半の時期だったので、かなり混んでいました。特にお年寄りが多く、中でも車椅子など足の不自由な御方の比重が高く、どうしても見物しやすい環境では無かったです。しかし、そんなことは気にならないくらい圧倒的な展示物の質の高さにすぐに集中できました。
入ってすぐの「瓦」群は、正直言って全く関心がなかったのですが、三彩のモノや東大寺式・大安寺式などの形式があることを知りました。その後の、総国分寺としての「金光明四天王護国之寺」の額や誕生仏は黒山の人だかりでした。後者は実にシンプルな造形で、幼児性を表現しようと(腕がむちむち)しつつ、頭は螺髪という矛盾に満ちた有り難〜いお姿でありました。「八角燈籠」は本当に持ってきて良いんかいとツッコミを入れたくなる程の存在感でした。大仏殿の前ではそんなに大きく見えないから不思議です。良弁さんの像は写真とは異なり、肉眼では彩色の部分がすご〜く薄く感じました。ところが、背面に廻ると鮮やかに色が残っており、袈裟の留め具までリアルに描かれていて圧倒されました。快慶作「僧形八幡神坐像」の毒々しいまでの鮮やかさではなく、古の色が微かに残る良弁さんに心惹かれます。
そして今回のお目当てである「金堂鎮壇具」の中の金鈿荘大刀(きんでんそうのたち)2口です。どちらかが伝説の黒作懸佩刀(くろつくりかけはきのたち)ではないかというので見ておきたかったのです。特に「陽寶劔」「陰寶劔」の存在が確認された以上、正倉院御物から除物となっている、失われた草壁皇子の黒作懸佩刀という護り刀が実は聖武天皇供養のために埋められていたということは十分考えられるのです。2口の内、花をくわえた鳥の文様が鮮やかな短い直刀が可能性ありと推察できましたが、国家珍宝帳にある「長一尺一寸九分」=約35cmにしては長いように思われました。2つ目のお目当ては、正倉院の御物で大仏開眼の際に使用された筆・墨・縹縷(はなだのる)などの仏具です。中でも縹縷は1300年近く経つのに藍の色が鮮やかなのにビックリしました。3つ目のお目当ては、「重源上人坐像」のリアリティです。これは予想通り・期待通りで、念珠を手繰る老僧の強い意志を写実的に描いています。像の前で手を合わせている女性がいたのも頷ける程、ありがた〜い彫刻です。
奈良に行くことなく、これらホンモノの文物に触れられ(特に正倉院の御物は奈良でも見られない)、至福の時を過ごせることを考えれば、決して高くないかも知れないません。一見の価値あり、お薦めです。