take-bow2014-02-23

図書館でいとうせいこう氏の話題作を借りて読んだ。不思議なタイトルに引きつけられたのと、『見仏記』でしか知らない小生には著者の小説って。。。というミーハーな関心も手伝って日頃全く手にしない小説を読むこととなった。『想像ラジオ』って何だろう、また『見仏記』的な面白小説かなぁというレベルで読み始める。ラジオの場面、特にリスナーとのやり取り、メールや手紙などに答えるシーンのリアリティは言うまでもない。流石ラジオの御仕事が長いだけはある。耳を澄ませば、聞こえてくる彼らの声とは運命の悪戯など命を絶たれてしまった人々の「彼岸のラジオ」だから、テーマやシークエンスは掴みにくいと感じた人もいるだろう。だが、あの未曾有の大災害を経験した現世の我々は何を聞くべきなのかとても考えさせられ、大震災以後にこのような作品を生み出した著者の並々ならぬ才能に感動した。中でも第四章のこの台詞には本当に共感する。
「僕は向こう十年くらい、あちこちの家やビルの前に黒い旗が掲げられていてもいいと思ってる。もちろん半旗になっていてもいいし、僕白身喪章を巻いて暮らしたっていい」
日々の変化に着いていく、生活に追われてあの時の思いを忘れがちな昨今、大事な大事な気持ちを取り戻すことが出来た作品。
想ー像ーラジオー。