take-bow2014-11-04

単行本が発売されたときから、読みたくてしょうがなかった作品をようやく読むことが出来た。著者の佐野眞一氏は東電OL殺人事件を扱った作品などノンフィクションで有名であるが、実際に作品全体を通して読むのは今回が初めてであった。本作は、日本を代表する金持ち(フローだが)であるソフトバンク孫正義社長の生い立ちからその成長・発展の力の源泉を解明しようとした労作である。ただ正直言って文体が小生にはあわず、読みづらいことこの上なかった。特に何回も「後のお楽しみにとっておいて」として説明を後回しにする点が全く頂けない感じだった。そんな個人的な壁を越えてでも読みたくなるような、強烈な内容であった。在日の人の話によく出てくる養豚と密造酒の話題や貧困、差別は当然のように強烈な内容である。そんな中から這い上がるように、生き抜いてきた孫氏の力強さは予想はしていたが、スゴイと思った。ただ孫正義の「(著者の言葉を借りれば)胡散臭さ」は、完全には解明し切れていないように思えた。特にお母さんと奥さまが少ししか出てこないのは、それこそ著者の儒教的な視野の狭さに思えてくる。歴史に興味が無く、後ろを振り返ることなく突き進む孫社長の家族的な「血」を解明しようとしたら、抜きには出来ないと思う。しかし、本労作は一読の価値がある作品であることに変わりは無い。