take-bow2011-01-06

実はベートーヴェンの音楽に魅せられて、クラシックの演奏を聴くようになったのです。CDも一端に名盤と呼ばれるモノを買い漁るようにもなりました。コンサートにも行きました(あれだけ嵌っていたロックは行ったことがないのです、実は)。でも、ベートーヴェン個人の人生については全く知らなかったのです。そりゃぁ、多くの楽曲を作ったことや聴力を失っても作曲を続けたこと、ストイックなまでに音楽に人生を捧げ、生涯独身だったことなどは知っていました。しかし、この本の著者に言わせれば、私のような無知な者でも、シントラー経由のロマン・ロランの伝記に基づく誤ったベートーヴェン像を鵜呑みにしていたに違いないです。特に、モーツァルトに関してベートーヴェンが毛嫌いしていたというのはあり得そうに思えたモノです。著者が言うように「実は彼ほど先人の教えや伝統に学び、歴史的な激動の時代に常に未来を志向しながら、自己を鍛錬し成長させ続けた芸術家はいない」ということを教わりました。カントの哲学やインド思想まで学び、それを自らのモノとしたベートーヴェンは、これまでの伝記にあるベートーヴェン像とは似ても似つかないモノです。本作は、著者が後半生をかけて解き明かそうとし続けたベートーヴェンの生涯を初心者向けの新書版として出したモノですが、注釈や年表・索引も完備していて巨人ベートーヴェンを知る導入編として、本作から如何様にも広がり、深くベートーヴェンを研究できる作品に仕上がっています。

青木やよひ(著) 『ベートーヴェンの生涯』 (平凡社新書)