take-bow2008-06-29

遠い昔、森村誠一の『悪魔の飽食』を読んだことがある。まさに震撼した。随分久しぶりに、その731部隊に関する著作を読んだ。不勉強な小生は青木冨貴子さんというフリーのジャーナリストを存じ上げなかった。この本も文庫になるまで知らなかった。本作で著者は、人体実験の話や満州でこの部隊が何を行ってきたかについては、ほとんど触れていない。むしろそれを周知の事実として(大前提として)、彼ら731部隊の医師達が戦後、戦犯容疑をいかに逃れることに成功したかをアメリカ公文書館の資料や石井四郎直筆のノートを駆使して読み解いていく。後に薬害エイズで批判を浴びたミドリ十字という製薬会社を創業した内藤良一に、自分を雇えと言いに行ったマッドサイエンティスト石井四郎。それを断る元部下の内藤。それぞれの戦後がある。生命科学の分野は一度間違えば、大量破壊兵器の生産工場と化す訳である。決して歴史の彼方に追いやられた話ではなく現在もその危険性を孕んでいるというのは言うまでもない。大作ではあるが、あっというまに読み終わるノンフィクション作品。