木島櫻谷展をやっと見る

take-bow2018-03-06

六本木にある泉屋博古館分館で開催されている木島櫻谷展をやっと見てきました。泉屋博古館って全く縁が無かったので、初めて行きました。六本木一丁目駅から直結したアクセスの良さはとても素晴らしかったのですが、何せ小さくてあっという間に見終わってしまうのがちょっと残念でした。夏目漱石が批判したという「寒月」を実際に自分の目で見て感じてみたいと思っていたので、ほとんど混んでいなかった本日はラッキーでした。銀泥(?)をベースに月夜の竹林が描かれているのだが、確か漱石は狐に対してダメ出ししていたと記憶している。展示してあった他の作品ほど豪快さは無いけれど、雪の竹林で食料を探し求めるケモノを描いた作品として不適切とは思えませんでした。後年、得意とした狸にしなかったのはなぜかと疑問には思ったけれど。屏風ほど大作で無いが、月や竹林と狸を描いた掛け軸が私的には好みだった。昭和初期までの衣笠近辺なら狸や狐は当たり前だった(現に私の学生時代にもいた)だろうし、モチーフとしてこれらを描こうとするのも当然ことだと思う。学生時代、お屋敷の横を通りながら、木島櫻谷という名前すら知らなかった無知蒙昧を恥じ入るばかりです。

特別展「仁和寺と御室派のみほとけ」を見る

take-bow2018-02-20

学生時代、よく行っていた仁和寺の改修に伴う特別展が上野の東博で開かれている。葛井寺の千の手を持つ千手観音が見たかったので、仕事の合間に無理をして鑑賞してきた。チケット購入時に40分待ちですと言われたが、実際には15〜20分ほどで中には入れた。ただ問題は、お年寄りが多いので人数的には大したことなくても渋滞を起こし、混み合っている感が半端ない。前半の古文書や軸などは小生的には欠かせない内容なのでもう少し丹念に見たかったが、やむを得ずかなり飛ばし気味になってしまった。お目当ての千手観音は最後の最後に出てくるので、そこまで体力・観察眼を落とさないようにしなければならない。予想通り圧巻の現物は360度から見ることが出来、手がそれぞれ救いを求める形を表しているのが見て取れる。お顔は十一面観音像となっており、後の仏像群では簡素化された千手観音と十一面観音像とに分かれていったのではないか、と思った。創建時の本尊と考えられる阿弥陀如来像は言うまでも無く、素晴らしいが京都で見ているからか感動が少ない。門跡寺院ならではの各時代の天皇の宸翰が見られたのも良かった。初見で発見が多かったのは、子島寺の両界曼荼羅(私が見たのは金剛界)、『新修本草』、龍華寺の菩薩座像、道明寺の十一面観音像だ。他は国宝指定を受けているのだが、龍華寺の菩薩座像は(理由は分からないが)まだ文化財としての手厚い保護は受けていないようだ。一見の価値があると思う。

ライアン・ジョンソン監督作品「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」

take-bow2018-01-31

スター・ウォーズ」シリーズ第8弾「最後のジェダイ」を仕事の合間に見た。公開期間も最終に近づいてきたのか、時間帯の選択が効かず3D版を大枚はたいて鑑賞することとなった。怪我の功名ではあるが、一言で表現するなら満足のいく内容だった。オビワン的な存在になっているルーク・スカイウォーカーが最後にフォースを見せつけるシーンは圧巻だ。レイとカイロ・レンの繋がり?はやはりフォースのなせる技なのだろうか。そして、まさかまさかの展開やあの人気キャラが再登場するとは。。。所々にギャグ的な笑いのエッセンスを入れているのは、ルーカスゆずりの伝統だろう。写真の↑このキャラ(ポーグ?)がメチャかわいい。3部作の真ん中という、結構厳しい位置を考えると次の完結編をどうするのか楽しみである。
フォースとともにあらんことを。
★★★★☆ブラボー

2018「センター入試−政治経済」について思うこと

take-bow2018-01-15

また今年もセンター入試が来た。例年通り、予備校の評価は難易度昨年並みの変わらずであるが、今年は政治経済に関する個人的な(ムダに長い)感想を以下に記したい(数字は通し番号の問題番号)。
1.アはリード文の「国防、…治安の維持に限定」が重要ヒントで基本的な問題。
2.A「第三の道」が分かり難かったはず。ブレア以外にもこのような主張をする政治家はいる。労働党政権は社会民主主義の政策はもちろん、新自由主義的な政策も加味して「第三の道」を主張。Bのネオリベは常識問題。
3.アは自由権、イは社会権、ウは請求権の例を選ぶだけ。基本。
4.これも基本。特に2カ所で用いているイは外せない。
5.○1道徳などほかの社会規範と比べた法の特徴、○2ボーダンの主権の定義、○3法治主義
6.1999 年の国会審議活性化法によって、政府委員制度は廃止。基本問題。
7.政府の規制による価格なので、市場での競争原理ではない点を忘れると誤ってしまう問題だと思う。規制によって2カ所のポイントで迷ったと思うが、需要はQ2の点を示すが、供給量がQ1しかないので取引量は供給量となる。
8.ローレンツ曲線なので身構えた人もいただろうが、文章を丹念に読めば間違えないだろう。○1大きい→小さい  ○2 80%→60%  ○3そもそも割合を示した曲線なのだから「同じ割合で増える」と同じグラフになる。
9.これは常識(基本問題でもない)。
10.基本問題だが、○3に引っかかりそうになった人は、「武力行使は禁止されている」のなら防衛(自衛隊)の意味がないことを思い出して欲しい。
11.イはやや難しいだろう。当時の国際情勢の正確な理解が求められる。 
12.○3に引っかかってしまった人もいたことと思う。○4の「ドル安是正」を読んで、答えを決定して欲しい。
13.年号が近すぎるので迷った人がいるかも知れない。ア1945→イ1946→ウ1948。
14.○1「神武景気」→「いざなぎ景気」 ○3「強化された」が×。○4内陸にコンビナートを作ったら大変でしょうね。
15.基本問題。○4に迷いかけた人は第二次石油ショックを思いだそう。
16.これも基本。「核実験を禁止」したら核保有国にならない。第2問はトータルで難しく感じたかも知れないが、このような問題をキチンと押さえるのが入試の極意である。
17.日本外交の三原則=国連中心主義、自由主義諸国との協調、アジア重視を覚えている人には易しい問題。
18.○1は1983、○2は1986、○3は2000年代。消去法が使えると良いのだが、難しい問題かも知れない。
19.「トレード・オフ」はキツイ。2017年追試の11「機会費用」を理解している人は解けたと思うが。このアはプライマリーバランス(PB)を消去して正解に到達できる。
20.これは基本問題。フェアトレードを知らない人でも消去法で対処しよう。
21.年号を知らなくても流れを理解している人は解ける基本問題。ちなみに年号は、A1948、B1995、C1967、D2001〜。
22.Aの石炭、Dの原子力が判断要素。Cの原子力0.0%もヒント。
23.出来なければダメ。
24.○1「自主財源」→依存財源。○2「増額」→減額。○3「ない」→ある。北海道夕張市は有名。基本問題。
25.フィラデルフィア宣言をおさえていない人は消去法で対処しよう。○2「賦課方式」→積立方式。○3「生活保護費」→年金など社会保険。○4「ドイツの宰相ビスマルク」→イギリスのベバリッジ。or「『ゆりかごから墓場まで』をスローガンに、」を削除。
26.○1「すべて」×。○2「上回っている」×。○3「アメリカ」×。
27.表の問題は丁寧に確認すれば正解に到達できるはず。各文の前半で各国の政治状況をヒントとしており、○1がアメリカ、○2がフランス、○3がドイツ、○4は日本と分かるはず。正解以外は述部に誤りがあり、○1「最も高い」 ○2「最も低い」 ○4「2番目に高い」がおかしい。
28.超基本問題。
29.解職請求=有権者の3分の1以上が分かっていれば出来るはず。
30.復興庁は、2011の東日本大震災以後の対応のため、2012〜2021までの期限付き官庁である。
31.「形式的には性差別に当たる措置であっても許容されるもの」=ポジティブ・アクションを理解すること。
32.基本問題。これも○2〜○4は述部がおかしいので解けてしまうはず。
33.ア「正社員よりも週の所定労働時間が短い労働者」=パートタイマー。イ秘書や通訳など16業務に対象を限定していたが、2012法改正によって拡大されたのは労働者派遣法。ウ「定年の引上げ、定年制の廃止…」など高齢者の雇用について規定しているのは高年齢者雇用安定法。
34.「日本で最高裁判所により違憲とされた法制度についての記述として誤っているもの」=合憲のものなので、落ち着いて最後をしめよう。

『DESTINY 鎌倉ものがたり』を見る

take-bow2018-01-01

恒例の元旦映画、今年は山崎貴監督作品『DESTINY 鎌倉ものがたり』となった。全くと言うくらい予備知識なしでの鑑賞は新鮮な驚きをもたらしてくれる。鎌倉を題材にしているので見てみようと思ったのだが、黄泉の国が出てくる永承ファンタジーとは。。。主人公の年の差の離れた新婚夫婦がピッタリだったことは言うまでも無いが、印象的だった登場人物を上げると---------
メチャメチャ迫力のある田中泯の貧乏神
軽すぎる明るい安藤サクラの死神
本当にピッタリで現実も?と疑ってしまう市川実日子の未亡人
などなど芸達者がもり立ててくれているので引き込まれてしまう。ただ、処々の映像描写が『千と千尋の神隠し』とダブるので、やや気になった。まぁオマージュということなのだろう。クラシックカーを集めたり、スタッフの努力も分かるが、この映画の隠れ主人公は江ノ電であろう。江ノ電なしはこの映画は成り立ったないと思った。
★★★☆ブラボー

科学博物館で「南方熊楠」展を見る

take-bow2017-12-26

上野の科学博物館で開催されている『南方熊楠生誕150周年記念企画展「南方熊楠−100年早かった智の人』をやっと見てきた。本来なら和歌山の記念館に行かなければ見ることができない品々のうち、代表的なものを常設展の一角を使って展示されている。中でも幼少期に写本したという『和漢三才図会』を本物と比較するコーナーは熊楠ファンには堪らない。私は見ながら写したと勘違いしておったのだが、明らかに記憶してそのダイジェストを「抜書」と読んでコレクションしていた。図まで記憶してこの手法で残すとは驚異的な能力だ。和歌山中学時代の恩師で本当に「先生」と思っていた鳥山啓の写真を初めて見た。「軍艦マーチ」の作詞者としても知られる熱き情熱を感じさせる風貌であった。またアメリカ・イギリスへの遊学中も使用していたのか,長持を修理するのに「ネイチャー誌」を用いている。プレパラートや「菌類図譜」に代表される図譜類は個人で所蔵しているとは思えないレベルで今やっと社会が熊楠に追いついてきたと感じさせるものばかりだった。ただ神社合祀の反対運動についてはもう少し『牟婁新報』などを具体的に見てみたかった。最後の「十二支考・虎」へ様々な知識を昇華させていく過程を窺い知れる展示は画期的に良かったと思う。個人的はもっと熊楠グッズを販売して欲しかった。

「運慶展」を見る

take-bow2017-10-31

東博で開催されている「運慶展」を見てきた。午後の仕事が空いたので、はせ参じた次第である。案の定、50分待ちです、と言われたのだが実際には30分ほどで中に入れた。帰りがけに見かけた「怖い絵展」の方が混んでいた。後者は若いお客さんが多いようだったが、こちらは仏像だらけなので、年寄りだらけ。さすがに拝んでいる人はいないが、動きが遅く不規則に移動するので、見にくいことこの上ない。作品群のうち、見たかったのは晩年の作品とされる無著・世親像である。「空」の理論を突き詰めた大乗仏教最大の思想家アサンガ・ヴァスバンドゥ兄弟の人物像である。これらはリアルをめざした作品だろうが、もちろん勝手に空想してイメージを作り上げている。他にデビュー作である円成寺の「大日如来像」が見られたのも収穫だ。高野山八大童子像も6体が見ることができた。ただこのような大きな企画にしか人が集まらないのは正直いかがなものか。以前、金沢文庫で「重源上人像」と対面したときは周りに一人も他人がいなかったのに。。。もっと夕方から出動すれば良いのかも知れないが、生活リズムと合わず毎回、混雑の中に突っ込んでいくことになる。一同に会することが希な作品群なので、やむを得ないのだろう。

山種美術館で川端龍子を見る

take-bow2017-07-27

戻り梅雨?のやや涼しい中、広尾にある山種美術館で開催されている「没後50年記念 川端龍子展」を見に行ってきた。初めて行く美術館なのでまったくアクセスが分からず、調べてみると恵比寿駅から歩けるようだが、確かあの辺は台地状になっていて大変かも知れないので、バスで行ってみた(これが正解)。建物が高くて立派なのに、地下の展示スペースは使い勝手があまり上手いとは言えず、大きな作品(例えば「火生」)を引いてみるのに十分な距離を保つのが難しい。が、作品群は洋画家時代の油彩も含めて鑑賞できて、素晴らしいラインナップであった。個人的には「草の実」という全面真っ黒な下地に金泥や銀泥で草を描いた対策が好みであった。しかし、歴史的に言って、日中戦争時の「香炉峰」と「爆弾散華」を見ておくべきだろう。戦争の初期には偵察機に軍服を着て乗り込み中国大陸を睥睨した前者と終戦間際に自宅に落ちた爆弾が破裂する様を描いた後者のコントラストは皮肉だ。前者から漂う有頂天感に対して、後者は日本人誰もが経験した戦争の悲惨さとその終焉に対し亡くなった魂を追悼する思いに溢れている。他にも「金閣炎上」や藤原三代の即身成仏を描いた「夢」など見所満点の企画だった。それにつけても戦時下の画家の生き様について考えさせられた。

「安政の大地震展」をみる

take-bow2017-07-20

本駒込東洋文庫ミュージアムで開かれている「ナマズが暴れた!?安政の大地震展―大災害の過去・現在・未来」を見てきた。絵画的な史料は少なく、古文書などの文献中心の展示で地味な企画のため本当にガラ空きだったが、あれから6年半の年月を思うと本当に大事な展示だと思った。古事記日本書紀にも地震(ナイフルと読んだそうです)の記載があり、中でも千年前の貞観地震多賀城など今回と同じような処が被害に遭っている様を日本三代実録は克明に残している。繰り返される自然災害に日本人はその度、立ち上がって復興を続けてきた。いわば地震による破壊とそこからの復興の歴史が日本史のキモだと言えるだろう。

一年越しで「吉田博展」をみる

take-bow2017-07-14

昨年、NHK日曜美術館で見た千葉で開かれていた「吉田博展」の紹介で、初めて吉田博という画家を知った。とても見たかったが、行けずに1年後の今回の展覧会を楽しみに指折り数えて待っていた。満を持して新宿の高層ビルにある美術館に行ってきた。この一年間に彼の伝記を読み、おもな作品群や版画を主とする制作活動などについても予備知識を得てきた。しかし、現物を目の当たりにすると、やはり伝記を書かれた安永幸一氏には申し訳ないが、彼の人生の一部を切り取って描いた評伝という印象を強くした。戦争中の作品は伝記やテレビで省かれていたため、初めて見て正直ショックだった。やはり時代が戦争とは無縁な自由人を許さなかったと言うことだろう。《急降下爆撃》のゼロ戦にはリアリティよりも彼の生きざまとは異なる戦争初期の高揚感しか感じられず、悲しかった。
初期の作品から非凡なる才能が感じられるが、やはり初の洋行が大きく彼の作風の幅を広げたと感じられた。できればアメリカで買われてしまった作品群があるのかないのか、あるとしたらどれなのか分かるようにして欲しかった。日本の洋画壇では異端児になってしまい、何より大御所・黒田清輝とは犬猿の仲であったことを考えると、自然、特に山をモチーフにした作品中心になっていったのも頷ける。そして圧巻だったのが、版画時代の作品群である。同じ題材の油絵や水彩画と比べても、完成度の高さは言うまでも無いだろう。しかも全て画家自身がプロデュースし、あろう事か自摺しているのは驚異的である。J.フロイトやダイアナ妃が愛していたという風景画群はもちろん素晴らしいが、やはり山岳や水辺を描いた作品群は圧倒的なクオリティを誇っていて写真よりもはるかに写実的、はるかに哲学的である。中でもお気に入りは、《日本アルプス十二題 劔山の朝》で剱岳に登ったことがある者ならこのリアリティは驚くだろう。兎に角、待った甲斐があった作品展であった。