名曲・名盤 長谷川きよし「遠く離れたおまえに」

take-bow2009-04-05

盲目のギター弾き・長谷川きよしが自らの音楽ルーツを訪ねる旅に赴き、その先々で「街頭録音」するというのが本作の際だったコンセプトである。もちろん最新作「40年。まだこれがベストではない。長谷川きよしライヴ・レコーディング。」のより卓越した演奏・歌心の方が、現在的な視野から見ても名盤にふさわしい作品だろう。しかし、より進化したアーティストの姿では無く、敢えて荒削りなライブ感たっぷりな演奏を堪能できる本作を彼の代表作として選んだ。モロッコ・スペイン・ギリシアという地中海世界でギターという楽器のもつ意味は際だっているといえる。
アルハンブラ宮殿採録された、自然エコーの「城壁」は中山千夏作詞の名演で、その一節「壁を崩すのは ただのただの人」という部分は小生の思考原則の源泉となっている。しかし、本当に好きな演奏は「キャティ」で、子どもの笑い声や羊の鳴き声をものともせずに歌いきる長谷川きよしの歌心に最も感動する。永六輔作詞の「トレドの風」やタイトル曲「遠く離れたおまえに」という名演も、今の長谷川きよしならもっと上手く聞かせるだろう。しかし、30年の時を越え再発されたこの名盤を復活させようとした人々の心意気と合わせてご紹介した。


長谷川きよし『遠く離れたおまえに』 1979(2005 フラッシュポイント・レコーズ CD化)