名盤・名曲「ドリス・トロイ」

take-bow2006-12-30

その昔、「幻の名盤」といわれ手に入らなかったドリス・トロイのアップル盤が紙ジャケ仕様で出ているのは知っていたが、清貧生活をする小生には手が出なかった。ところが、「レコードコレクター」誌上の「エリック・クラプトン−ゲスト参加レコード−」を読み返していて、どうしても欲しくなりサンタさんの一人呆け突っ込み的ご褒美として購入した。小生にとっては時代・世紀を超えた新譜である。原盤に5曲ボーナストラックが加えられている。
本当に上手い黒人シンガーだなぁと思ったら、当たり前でストーンズの作品やピンク・フロイドの『狂気』にも参加しているじゃないですか。「虚空のスキャット」、知らなかった儂がバカだった。しかし、よくよく考えるとそれでも売れなかったから「幻の名盤」だったわけで、それはなぜかという点に興味が移った。素人意見で批判を恐れずに言うなら、アルバムを統一するまとまりがない。アナログ時代の盤は更に一枚の作品としての完成度に欠けると思う。ジョージ・ハリスンがプロデューサーとして機能していなかったらしく、豪華なゲストミュージシャンだけが売りのアルバムというレッテルが貼られてしまったように思える。個人的には「ハリ─」「ソー・ファー」「ヤコブズ・ラダー」などがお気に入りではあるが、曲の配置も悪い。印象が残るような曲順ではないので、アナログ時代には辛かったことと推察する。また、曲調もソールフルではあるが、バラードや逆にシャウトしまくる曲が少なく、全体の印象を単調なモノにしてしまっているのも惜しまれる。ボーナストラックも含めたCDでは自分なりの曲順で楽しむなどの工夫をすると、このアルバムの名盤たる所以がより分かりやすいのではないか。
ドリス自身はもちろん、ジョージも亡くなったが、この歴史的名盤を生んだ、ミュージカル「MAMA,I WANT TO SING」のモデル、ドリス・トロイの魅力は永遠に不滅である。


DORIS TROY『DORIS TROY』 Apple 1970