名曲・名盤 四人囃子「一触即発」

take-bow2006-07-23

その昔、ピンクフロイドの「エコーズ」を完璧にコピーする日本人バンドがあるという噂で持ちきりであった(勿論、プログレ好きの現オジさんの間ではだが)。バンド名は四人囃子。彼らのファーストアルバム『一触即発』はとても高い評価を受けていた。
しかし当時、少年であった私には余分なレコードを購入する経済的な余力もなく、また曲の長さからラジオ等で全てかかることもなく、未聴のまま憧れだけが増大していった。まさにプラトンのエロース状態。このアルバムは私にとってイデア界に鎮座ましましたのである。
社会に出て自由になるお金ができた時にはこの作品もCDになっており、私がやっと聴くことができたのはこのCD盤である。おまけにCDシングル「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ」がついていた。
何よりも吃驚したのはアルバムを通しても35分に満たない、その量的な部分に愕然とした。おいおい第九の半分かよ、と思いながら、かけるとそこには日本語によるプログレッシブ・ロックが詰まっていた。森園勝敏氏のボーカルが眠たさを誘い、「はっぴいえんど」を思わせる感じがあって、初めは違和感があった。しかし聴けば聴くほど、所々ELPやキングクリムゾンを思わせる曲調もあり、とても馴染めるモノになった。プログレはややもすると、環境音楽イージーリスニングのような(現に『狂気』はそのためにアメリカで売れた)扱いを受けるが、彼らの音楽性は幅・奥行きともに広くまさに世界レベルだった。「おまつり」「一触即発」は草創期日本語ロックの到達点を示している。まさに日本ロックのエイドスであったのだ。

しかし、彼らを有名にしたピンクフロイドの呪縛は、彼ら自身の活動を制限し続け、その後の自由を奪ったと思えてならない。ここに日本のロックの宿命を感じつつ、久しぶりに聴いたのであった。


四人囃子『一触即発』 1974 TAm