take-bow2015-04-01

忘れられていた数学者アラン・チューリングの人生を描く本作は、アカデミー賞脚本賞を受賞している名作だ。チューリング博士は電子頭脳(AI)やコンピュータの原理、題名にもなっているチューリング・テストなどで多くの科学的な功績を残した。その中の一つに第二次大戦中のナチスドイツの暗号を解読したエピソードを中心に物語は進む。副題にある「エニグマ」はドイツが誇る暗号機械で人間の頭で組み合わせを解読するには2000万年かかるとされていた。これに対してチューリングはマシンにはマシンだと主張し、苦労の末、解読に成功する。マシンを親友に因んでクリストファーと名付ける(本当は bombeというらしい)が、ここにも秘密があった。暗号が解読されたとナチスに知られると、別の暗号へとシフトされてしまうので、重要な作戦かどうかを見極めて解読した暗号の情報を軍に伝えることとした。また、内部にいたソ連(!)のスパイには時折、にせ情報を流すなどしていた。ナチスの秘密を暴くために多くの秘密を抱えることとなったチューリング博士は数奇な運命の下、歴史から抹殺されて不遇の晩年をむかえる。情報、もしくは秘密を抱え続けたチューリングは「青酸カリ」の「りんご」を食べて亡くなったとされる。彼に因んでアップル社のロゴの右の囓った跡は、チューリングの毒リンゴという都市伝説があるほどだ。アラン・チューリングという一人の天才の人生が分かるように、ヒントまでちりばめられた作品である。              ★★★★ブラボー