名曲・名盤 グレン・グールド「ゴールドベルク変奏曲」

take-bow2006-04-23

クラシックって、取っつきにくい。昔、学校での音楽教育はクラシック一辺倒であったから、私はいやでいやで仕方がなかった。お仕着せ、強制、無理強い、そんな言葉とクラシックは等号で結ぶことが出来た。音感の悪い小生は楽器演奏も覚束なかったのである。
私が初めてクラシックを自ら聴くようになったのは、以前紹介したムソルグスキー展覧会の絵』であったが、その後、友人のD倉先生(小生のクラシック師匠)に薦められて聴いたのが、このグレン・グールドの『バッハ:ゴールドベルク変奏曲』1955年版であった。

ビックリした。何とクラシックのピアニストがスイングしながら、あろう事か、ハミングまでしているのである。私のそれまでのクラシック観を根底から地響きをたてて崩し、全否定するにあまりある作品だった。バッハの曲をチェンバロではなく、ピアノで演奏していることだけも違和感があるのに、この曲のもつリリシズムを全面に現出したかのような表現力は何ものか。その名演に聞き惚れてしまって、結論が未だに出せない。時、場所、人を得てこの曲は開花したのだ。彼、グレン・グールドと出会わなければ、この曲が今日これだけ注目されることは無かったのではないか、と思う。

後に1981年デジタル録音版を聴いた。もちろん、この演奏も素晴らしく老成した観のあるグールドの表現だ。たぶん1955年にこの演奏で録音していたら、もっと衝撃は大きかったとは思う。しかし、残念ながら最初の第一波の衝撃波に比べると1981年版の第二波はやはり弱いと思う。


この作品以後、私は、クラシックは演奏によって全く異なるし、メチャメチャ格好いい作品があるのだと知った。ここから、この一枚から、私のクラシック人生が始まった。



Glenn Gould,Piano 『J.S.Bach:GOLDBERG VARIATIONS』 BWV988  SONY CLASSICAL 1955年録音