take-bow2013-11-05

平日の今日、学校の代休を利用して久しぶりに神保町の岩波ホールマルガレーテ・フォン・トロッタ監督の最新作『ハンナ・アーレント』を観に行ってきた。哲学者ハンナ・アーレントの実像に迫る映画なので、混むこともないだろうと推測しつつも空いていて見やすい状況で楽しむために平日を選んだのだが、甘かった。チケット売り場にヒト(Da-sein)が列んでいるのをみて慌てて上に昇ると既に階段にビッシリ。な、なんで???意味も分からず、さっさと席をキープしたが、みるみる客が溢れて満席に。『イェルサレムアイヒマン』をテーマに持ってきているので観やすいからなのか、不可解なまま。映画が始まる。
南米である人物が拉致される。世界に誇るモサドがナチの戦犯アイヒマンを裁判にかけるためである。ニューヨークで大学教授をしていたハンナ・アーレントは志願して、イスラエルで行われる裁判を傍聴して、そのレポートを雑誌に発表することとした。ホロコースト生き残りでもあるハンナの激烈なアイヒマン批判を期待した人々の意に反して、ハンナはただの一般人が犯罪者になっていく悪を「悪の凡庸さ(陳腐さ)」として描き、思考停止の怖さを人々に問いかけた。そこからは現代の魔女狩りの様相となっていく。映像の中でハンナがやたら煙草を吸うのが気になった。彼女が恩師ハイデカーよりも短命に終わった理由の一端を見た思いがした。監督の描く女性は、ローザもそうだったが実に芯のある強い人物が多いように感じられた。その逆に回想シーンで登場するハイデカーの芯の弱さが好対照であった。最後の大学の講義で自らの考えを述べるハンナは人間の抱える本質的な問題点に挑む哲学者としての現存在(Da-sein)を明確に宣言している。
★★★★☆ブラボー