名曲・名盤「トレイシー・チャップマン」

take-bow2006-06-04

その歌い手はギター一つで何万もの観衆を相手に歌い出した。

♪Don't you know
♪They're talkin' about a revolution
♪It sounds like a whisper

観衆は歌に引き込まれ、波を打ったようになる。ネルソン・マンデラの70歳の誕生日を祝うイギリスでの記念コンサート(Nelson Mandelay's 70th Birthday Tribute Concert)の1シーン。低い、低い歌声。歌い終わると、頭を下げて颯爽とステージそでに消えていく。これが彼女、トレイシー・チャップマンとの出会いであった。黒人の女ディランという感じの勇姿。格好良かった。
http://youtube.com/watch?v=YwNPgGkNL1A&search=TRACY%20CHAPMAN

この曲を収録したデビューアルバムグラミー賞を受賞する大ヒットアルバムとなり、中でも2曲目の「ファスト・カー」はシングルとしても大ヒットしたのであった。だが、私にとってのトレイシー・チャップマンは「トーキン・バウト・ア・レヴォリューション」を切々と歌い上げる吟遊詩人であり、アメリカで「革命の到来」を予感させるという実に矛盾した魅力をもった歌い手として、今でもお気に入りの一人である。その後、原点回帰のように黒人音楽・アフリカの民族音楽のリズムを取り入れていったが、残念ながらこのデビューアルバム程のインパクトはなかった。このアルバムのもつパワーはまさに時代と、才能と、に裏打ちされたモノだからこそ輝いて見えたのだろう。


本当に囁かれていたのだ、「知らないのか、奴ら、革命について話してるんだぜ」って。


TRACY CHAPMAN『TRACY CHAPMAN』1988.04 Elektra