take-bow2014-01-09

サウジアラビア映画を初めて観た。この「初めて」は「サウジアラビア映画」と「観た」の両方にかかっている。サウジには映画が無いのである。正確には映画館が無く、ビデオやTVで見られるモノ以外はゼロで国産ではない外国の映像しか見られない。、この映画は初のサウジ映画であり、しかもサウジアラビアの女性監督の作品なのだ。個人的は今年2本目(一本目の『プレーンズ』はガッカリなのでコメントしない)になる本作はわざわざ神保町まで足を運ぶに値する作品であった。
この映画の原題は主人公の少女の名前『ワジダ』であり、このタイトルに本作の主題である女性の地位とそれに立ち向かう少女の姿が込められている。それにしてもサウジアラビアという国について全くの無知であった。そりゃぁイスラム教の王国でメッカなど発祥の地であるとか、日本の原油輸入相手国一位であるとかは知っていたが、女性の地位の余りの低さに驚愕する。第4夫人まで許されるといってもお金持ちだけの話だろうと勝手に思い込んでいた。主人公の父は何の仕事しているのか、あまり裕福ではなく(その割には大きな液晶テレビやゲーム機を持つ)、ワジダの母も大変な思いをして働いていて生活を支えている。男の子を産めない母に代わって、第二婦人をもらうことになるのはイスラム世界では一般的なのだろう。いつもダンナの顔色を覗い、時には口げんかもするが、気に入られようとする母親の姿はたぶんサウジの夫人たちのごく普通の姿なのだろう。そんな家庭で主人公ワジダは女性が乗るモノではない自転車を手に入れようと商売をしたり、嘘をついたり、努力(?)を重ねるのだが、決定打はコーラン暗唱コンテストで優勝して賞金をゲットすることを目指すのだが。。。
爽やかなラストシーンにサウジの未来に期待(楽観の方が正しい?)している女性監督の心意気を感じた。様々な制約下で撮影した本作は『無防備都市』や『旅芸人の記録』に匹敵する映画史に残る作品である。
★★★★☆ブラボー