take-bow2007-04-22

十年以上前になるが、免許を取り立ての頃、車で飛騨高山まで行ったことがあった。美味しい郷土の味あり、最高の景色あり、温泉ありで本当に良い所だった。二日目ぐらいにガイドブックを見ていると、飛騨唯一の国宝として安国寺があげられており、「経蔵」が何なのかも知らずに行ってみようと言うことになった。
川沿いの高台にその寺はあった。後に安国寺とは、南北朝期に戦乱で亡くなった人々を慰霊するために、夢窓疎石禅師が足利尊氏に建てさせた古刹であると知った。突然の訪問だったが、拝観したい旨を告げると、お寺の奥さん(ご内室というのだろうか)がこころよく案内して下さった。本堂→経蔵へと向かう。現在は鉄柵で覆われているらしいのだが、どうも記憶にない。あの頃は何から何まで見せてくれる感じだったのだ。そして、ご内室さんは、
「廻していきますか?」と仰られる。
「はぁ、よろしいのでしょうか?」と僕。
「ええっ、どうぞどうぞ」とご内室さん。
「それじゃ、お言葉に甘えて。」
ということで、カミさんと僕とご内室さんの三人で一切経の経典が収められている八角形の輪蔵を廻したのであった。ご内室さんが仰るには、昔、近所の人たちが暖を取るために経典を燃やしてしまったので、所々ないのだと言う。何ともバチ当たりな話ではないか。それにしても国宝を触ったのみならず、グルグル回転させたのは後にも先にも、あのときが初めてであった。今は鍵がかかっていて、外から眺めることしか出来ないようなので、本当に貴重な体験をしたなぁとしみじみと思う。
国宝輪蔵

ご案内                                         〒509-4107 岐阜県高山市国府町西門前474                     TEL:0577-72-2173                        公開:9:00〜17:00    拝観料:大人:500円 要予約