take-bow2007-01-25

「となり町との戦争が始まる。」という何気ない書き出しで始まる、この小説が読者を引きずり込むのにそんなに時間はかからないだろう。どこで行われているか、戦闘らしい戦闘は見えないまま、地域振興の一環として「戦争」という業務がヒタヒタと主人公にも押し寄せる。ほんの1ページ読んだだけでも、とても尋常ならざる才能を著者に感じる。芸も細かい。役場への報告書の末尾に「この用紙は再生紙でつくられています」という辺りにニヤリとさせられる。ただ前半のぐいぐい引っ張り込むような筆致と比べると、後半のタッチは弱いように思えてならない。特に最後がイマイチ。。。と思っていた。しかし、よくよく考えてみると、著者はあいまいな戦争、目に見えない戦争、とらえどころのない・不確実な戦争、を描こうしてきたのだから、この結末になるのが当然であると考えるようになってきた。そしてそんな戦争とあなたも私も無縁ではないのである。
やっと読むことができた。本屋で立ち読みして以来気になっていたが、貧乏オヤジの小生には買えなかったのである。今回、文庫本化によって念願叶ったという訳である。何でも映画化されるそうだが、どこまで原作の面白さを引き出せるか、お手並み拝見(やや否定的に)という処であろうか。なお、文庫本にはサイドストーリーが収録されているのでお奨めです。



今回の直木賞受賞作なしに抗議するものである。  選考委員何しとんじゃっ!