take-bow2006-04-21

corvoさんの薦めもあって、竹橋の東京国立近代美術館藤田嗣治展を見る。彼の作品に初めて出会ったのはブリジストン美術館でみた「猫のいる静物画」だったと思う。確か記憶が正しければ、背景が黒く塗られていてビックリした覚えがある。今回は生誕120年にあたり、藤田嗣治レオナール・フジタ)の全生涯に渡る作品群を集めた力の入った展覧会であった。フランスで活躍し、藤田を受け容れることの出来なかった日本を捨てた注)彼の思いを感じたかった。
中でも私がもっとも見たかったのは、戦争中の戦意高揚画だった。一部屋に大作が5点。もの凄い迫力だ。素人の私にも分かるほど、それ以前(フランス時代)の藤田とは異なり、迷いが感じられない。これだけの作品をモノにしてしまっては、「戦犯容疑」をかけられたのも頷ける。
しかし、本当に圧巻だったのは、戦後、再びパリに渡ってフランス人として生きることを選んだレオナール・フジタの作品群だった。線の細さ、人の描き方のリリシズム、主題が子供、神、寓話的世界。どれも迷いがない。今度はホンモノだ。まさに仏教で言う涅槃の境地だ。気になったのは、「連作〈小さな職人たち〉」の真ん中の宗教画で、背景の黒が初めて下に来ていることだ。今までの記憶と今日見た作品では、(墨で塗ったような?)黒い背景が上部に位置していた。宗教的安らぎの境地に達したレオナール・フジタの幸せな表情を見るにつけ、この展覧会を見る価値充分あり注)と思ったのであった。


http://www.momat.go.jp/Honkan/Foujita/index.html#event


注)初期の作品には墨・硯が多く描かれ、濃絵の技法などが用いられていて、真の意味で日本を捨てられなかった部分も分かる。捨てた日本に対する深い愛情。これ こそ正真正銘の「愛国心」と感じた。
注)いつものことだが、あの混雑。待たされ、肝心の大作を離れて見られない。見方も知らない客の多いこと。ぜひ平日の午前中にどうぞ。