take-bow2006-03-24

「山を想えば 人恋し
人を想えば 山恋し」(百瀬慎太郎)

初めて白馬から見た剣岳の偉容は忘れられない。もっともその時は名前が分からず、「あれ何だ?」と言っていた位だから、こちらのレベルも大したことない。ただそんなド素人でも興味を持ってしまうほど、特異な個性の持ち主だ。このように強烈な個性を持った山には槍、穂高鹿島槍、南では甲斐駒ヶ岳などがあげられるが、中でも日本海にほど近い場所なのもあって、剣岳の自己主張はバツグンである。剣の先のように、諸刃の名刀のように、江戸期の「立山曼荼羅」では地獄の針の山として描かれている。


小生にとって、剣は挑戦し続けている山である。一番初めは、小屋がけの単独行で台風が接近している中、室堂のバスターミナルを出発。雨風ともに強くなり雷鳥沢を登っている際には、何度か風を避ける必要が生じるほどであった。別山乗越の剣御前小屋にやっとの思いで到着。しかし、翌日は台風来襲のため丸一日停滞。小屋にいる客は私くらいになってしまった。もちろん目の前にあるはずの剣はまったく見えない。ところが、翌朝は台風一過の快晴で、あれほど遠かった剣を目の当たりにしながら、実に快適に登ることが出来た。難所として知られる剣岳だが、落ち着いて一呼吸おいて当たれば一般登山道なので登れる。兎に角、焦らないことだ。それでも、下山路のカニのヨコバイにはまいった。背の低い小生では、足を確保する場所が見あたらず、鎖をもって身を投げ出す形にならないと下れないのであった。天候が落ち着いて安定していたからこそ、難なくこなせたのだろう。好天を山の神に感謝した。そして、下山途中で室堂平の温泉に浸かったのはいうまでもない(やはり今回も温泉ネタ)

その後、無謀にも単独行&幕営で2回挑戦したが、2回とも暴風雨に遭い山頂を踏むことなく撤退している。剣沢の幕営地で撤収する時にテントを押さえるため、石を置いたらテントに穴が空いていた。結局、小生、一度しか山の頂には達していないのである。

こんな思いをしても、もう一度、いや何度でも挑戦したい山。それが剣岳である。           (写真は剣沢野営場から剣岳)