呉座勇一著『応仁の乱』を読む

take-bow2017-05-21

とても売れているという本書は出たときから欲しいと思っていた。それは小生があまりに応仁の乱を知らなすぎたからである。知ってるつもりになっている応仁の乱の実像を解き明かすのが、本書の目的だとしたらかなり厳しい評価になってしまう。結局、分かりにくい歴史事象の応仁の乱の分かりにくさが判ったというのが一番正確で率直な感想だ。そんなレベルの低い感想だけでは著者の労苦に報いることが出来ないので、いくつか小生でも判った点を記す。
1.「国民」の存在。奈良というか興福寺春日大社独特の国人層にあたる呼び名を知った。
2.尋尊『大乗院寺社雑事記』と並んで貴重な史料の存在。経覚の『経覚私要鈔』の重要性は本書のおかげで理解できた。
3.興福寺のうち、近衛家は一条院に九条家は大乗院へという摂関家の棲み分けがなされていたという基本的なことを知った。
4.畠山氏の分裂が応仁の乱を準備し、もともと細川・山名の対立があった訳では無い点を知った。ここから勢力均衡によって戦いが長期化・泥沼化する点にも結びつくことを理解した。

奈良という京都から適度に離れた土地から応仁の乱を見ていたので、客観的に論じることが出来るということは逆を返せば、現場から離れすぎているという弱点を本書はもっているのでは無いかという素人の疑問が残った。