吉村昭『日本医家伝』を読む

take-bow2016-08-13

シーボルト展を見て、どうしても娘の「おいね」の人生を知りたくて買い求めたのが、この本である。現在は絶版なので、古本で購入しアッという間に読み終えた。12人の江戸から明治にかけての先進的な医術を納めた人たちの人間くさい人生が判る作品となっている。シーボルトの娘・楠本いねが女医になったのは知っていたが、強姦され娘を産んでいる事実などは一般的な歴史の教科書では知られていない。正規の医師試験に合格して初めて女医となった荻野ぎんも知ってはいたが、若くして嫁いだ夫に性病を移されてその治療の中から医学を志すとは知らなかった。山脇東洋・前野良沢・伊東玄朴・秦佐八郎なども表面的な知識しか無かった。今の医者と違い、権威や偏見など「世間」の不寛容と闘って今の医学の進歩があることの分かる良書だと思う。