やはり日本のマンガは優れた表現

take-bow2014-08-16

被災地の中でも福島の現状は最も分かってない。新聞記事やテレビなどの映像を見ても、その実像に迫ることは不可能である。文字のメディアの方が少しは現実に近いのかと思っていたが、最近読んだ漫画と比べると雲泥の差であることを実感できた。竜田一人『いちえふ』は、我々が福一と呼んでいる福島第一原子力発電所(1F)で現実に働いてみて、その現状を伝えようとした作品だ。絵の描写力(特に線の力強さ)が圧倒的で、パラッと見ただけで読むに値する作品であることを認識できると思う。原発批判や東電批判といった単純な主張では無く、中で働いている方たちの苦労を認識できる作品だ。原発で作業されている方々の「俺たちが止めてみせる」という強い意志に感動するとともに、政治家や官僚の無能・無責任に怒りがこみ上げてくる。井上きみどり『ふくしまノート』は、福島に生まれた市井の方々の現実を描いている。これも新聞やテレビなどがやるべき(なのに、やっていない)仕事を丹念にこなしている。絵はノンビリした作風なのだが、内容はヘヴィーなものも含まれている。浜通り中通り会津に分かれる福島の特殊性もよく理解できるだろう。津波原発事故のエリアで農機具がほとんど盗まれていると言った事実は、全く知らなかった。こうした時には、日本人は泥棒をしない的な幻想を打ち破る現実の数々に打ちのめされるとともに、それでも福島で頑張っている皆さんの力強さに脱帽である。
今更ながら日本のマンガの底力を認識し、漫画の優れた表現力に感動した。共に続編を期待している。