take-bow2011-08-29

近所にシネコンができて気楽に映画を見られる幸せを得た代わりに、そこでしか見られない映画を電車代+時間をかけてまで見に行かなくなっていた。でも、この作品は少なくとも教員は、いや教育に携わる仕事をしている者は見るべきだと思い、わざわざ神保町の岩波ホールまで行ってきた。懐かしい映画館、今どき座席指定制でなく、椅子も(昔は他より良かったのだが)座りにくく、階段状では無いので前の人が邪魔、女性(おばさん)が多い−男が1割もいるか?、など天然記念物のような映画館となっていた。

本作はアフリカのケニアを舞台としている。片足を引きずったおじいさんが、小学校に通いたいと言ってくるシーンから始まる。年寄だからと断られても、ノートと鉛筆がないからと断られても、制服を着ていないからと断られてもマルゲおじいさんは諦めない。制服に見える服装でやって来たおじいさんに、女性校長のジェーンはついに入学を許可する。おじいさんの境遇が、辛い過去が、一つ一つの映像として語られていく。学びの場を得た84歳の小学生をマスコミや一部の政治家はもて囃すが、みんながみんな、それを受け入れた訳ではない。うちの子どもと何であんなジジイを一緒に、と怒る親もいる。それでもマルゲおじいさんは諦めない。しかし、学校という空間は不思議だ。同じ空間で学んでいる同級生の子どもたちはみんな、おじいさんと友達になっていく。そしておじいさんは生徒でありながら、先生のように(いや、そう先生なのだ)他の子の可能性までも引き出すのであった。。。
日本語タイトルよりも、原題の「The First Grader(小学一年生)」の方が、正確でしかもピッタリだと思った。そう、ピッカピッカの一年生なのだ。マルゲさんの「学びたい」だけでなく、子どもたち一人一人の「学びたい」が、眼の中にキラキラと輝いている。日本ではあまり見られなくなったが、「学びたい」が溢れてる。そんなとってもステキな映画だった。


「私にとって自由とは、学校に行き学ぶこと。
私はもっともっと学びたい。」 byキマニ・マルゲ

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