take-bow2010-04-11

花粉症であることも理由の一つだろうが、春は好きになれない。3月の別れと4月の新生活が同居して実に精神的に不安定なのだ。


そんな折も折、とんでもないニュースが飛び込んできた。敬愛する作家井上ひさし氏が逝去されたとのこと。青春期からずっと読み続けている小説家なのでいつまでも歳をとらないような錯覚を起こしていたが、75歳だったそうだ。そんなお歳だったんだぁ〜、不安定な精神がよりバランスを崩しそうになる。氏の代表作と言えばやはり『吉里吉里人』であるが、小生的には初期の『ブンとフン』や『モッキンポット師の後始末』が印象深い。『吉里吉里人』は巨匠としての大作をモノにした素晴らしさがあるが、小生の思い出の作品はまだ発展途上のエネルギーを放出しまくる氏の姿と重なり合わさる。特に『モッキンポット師』はラジオドラマで聞いてから原作を読んだので、初期の氏の創作活動の場が演劇・テレビ・コントなど視聴覚に訴えるモノであったことと連動する。コメに関する著作や九条の会の活動、「ひょっこりひょうたん島」やこまつ座の舞台など多方面に活躍されたのは言うまでもないが、小生にとって筒井康隆と並んで、愛読する数少ない小説家であった。最近、仙台一高(『青葉繁れる』に詳しい)が男女共学になったという新聞記事を読み、そうえいば井上ひさし氏はどう思うのだろう、などと漠然と感じていたのだが、まさか訃報に接することになるとは。本当に立ち上がれないほどのショックだ。氏の有名な言葉を最期に。


むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをゆかいに
ゆかいなことをまじめに書くこと     井上ひさし



キリスト教徒の氏のことだから、天国に召されたに違いない               合掌