take-bow2006-02-10

全米のみならず世界中を巻き込んで、議論の的となっている問題作ミュンヘンを観た。スピルバーグ作品としては異例の扱いで、未だに公開になっていない州もあるとか。理由はもちろんそのテーマ性にあるのであって、ユダヤ人である彼の政治姿勢に問題がある訳では無い。
そんな中、著しく速く日本公開がなされる(アカデミーの最有力候補ブロックバック・マウンテンですらまだなのに)というのはなぜだろう。日本人はこういったデリケートな問題に対する認識が不足しているから、どうせ分からないだろうと考えられているのか。それとも映画会社的に何とか投資した費用を回収するために、日本で良いからお金になりそうな処で回収しようと考えたのか。実に不可解ではある。

スピルバーグは「プライベートライアン」以上に、執拗に人間に対する殺戮というモノの現実を描いた。それはこれでもかという感じなので、小生の尿意すら消し飛んでいき、席を立つ人もいるし、隣の女性は顔を隠すほどであった。ラストシーンでNYの世界貿易センタービルのツインタワーを映し出し、「テロに対するテロでの報復の無意味さ」を9.11にかぶせている。「ブラック・セプテンバー」のテロに対する報復が「ターゲットは11人」というのは何ともはや、恩讐の彼方にあるモノを人類は見つけ出せるのかを問うていると思う。


はたしてハリウッドはスピルバーグの勇気と人類愛に賞賛(アカデミー賞)を贈るのであろうか?