ついに「この世界の片隅に」をみる

take-bow2016-12-20

今年は忙しかったために映画館の上映に行く機会が少なかった。今回も無理かなぁと考えていたのだが、大ヒット上映中のために近くのシネコンでもやっていて、観ることが出来た。片渕須直監督作品「この世界の片隅に」という話題作である。絵のたおやかな感じと主役ののん(能年玲奈)さんの声を聞いて、見たいと願い続けていた。茨木のり子さんの詩「わたしが一番きれいだったとき」を思い浮かべながら見始めた。こどもの頃のすずさんも含めて、のんびりと、淡々と、穏やかに戦争に向かっていく。心がキュンとなった初めのシーンは、筆箱の短い鉛筆が一本というもの。そうだった、昔はみんな鉛筆を大事に使ったモノだったから。呉という軍港の郊外に住んでいるので、否が応でも戦争の方からすずさん達の日常に近づいてくる。まさに「戦争が廊下の奥に立ってゐた」(渡邊白泉)のだ。平凡な普通の日本人の生活には、このように戦争は近づいてきたのだろう。ということは2016年の今まさに、この映画の冒頭のような感じなのかも知れない。そして決定的な戦争を描いているシーンが登場する。え、えっ、そこ。どのようにすずさんの日常に戦争が「立ってゐた」のか、探りながら見ていた私には衝撃過ぎて、予期できなかった。そして絶句、涙も出なかった。日常の戦争とはこういうモノなのだろう。素晴らしいレベルの作品だが、一点だけやや不満なのがコトリンゴさんの「悲しくてやりきれない」を冒頭にもってきた点だ。エンディングだったのでは無いでしょうか。小生の蛇足の感想とは関係なく、文句なしの ★★★★★ブラボー です。