「ムンク展−共鳴する魂の叫び」を見る

take-bow2018-12-11

結構な混雑の中、上野の東京都美術館ムンク展を見る。人のことは言えないが、年配の方が多かったのに驚いた。やはり死と向き合った画家の姿に共鳴するのだろうか。正直「叫び」にはあまり関心が無く、今回はパスかなぁなどと思っていたら、日曜美術館で取り上げているのを見て俄然行く気になった。お目当ては各時期さまざまな描き方で表された自画像である。18歳の精悍な青年自画像から精神的に行っちゃってる「地獄の自画像」「スペイン風邪の後の自画像」、1930年代の「硝子のベランダの自画像」などその時々の精神状態を絵画化する能力に圧倒される。「マラーの死」もある意味自画像といえるだろう。精神や心の叫びを絵画に描いたその功績は大きいと感じた。死の恐怖に苛まれながら描き続けた画家は皮肉にも80歳過ぎまで長生きし、さらに皮肉なことにナチスヒトラーによって退廃芸術の烙印を押され、家まで戦火にまみれ、あれだけ恐れた死を迎えるとは。流行の画風を取り入れながら、抽象画の先駆的な作品も描き続けた画家は安寧に涅槃を迎えたのだろうか。充実した展示に満足であった。
画像は最晩年の自画像「自画像、時計とベッドの間」